デッドエンド

別に隠してもないけどわざわざ言いもしないこと

かわいいから大丈夫

この前、ふと思い立ってGoogleフォトで写真を見返したらたくさんの元彼の写真と目が合った。

 


今日は元彼(以下M)のことについて書く。

正直言って、どんどん薄れていって、細かいことは忘れてしまいそうだから、書き残す。

私の人生の中で一番私に変わるきっかけを、気付きを与えた人。

 

 

 

Mとは当時18歳の私が若気の至りを極めていた頃汚い居酒屋で出会って、私から話しかけた。9個上、27歳。

酔って、そのまま周りの人(知らない)に、そこのふたりで帰んなよ!と意味わからないことを言われ、言われた通りにタクシーになだれこんで、ホテル、という、普通に最悪の出会い方だった。

 

けど、私はMと出会えたことが嬉しかった。

 


何を話したかは全然覚えていないけど9歳も年下の、反抗期を拗らせて、謳歌していた私の話を、一晩中面白いと言って聞いてくれたから。

乱暴にされてもしかたない状況でそれは優しく抱いてくれたから。

 

次の日の朝も、なんか、色々とちゃんとしていておかしかった。スタバで真面目な、たしかお金の話とかされた。〇〇ちゃんにはもっと教えてあげたいなとか言われた気がする。

 

変な大人がいるんだなー、こういうもんなのかな?遊び慣れてるのかな?マルチとかではないよな?とりあえず面白いな〜と新種の生き物を見つけたような気持ちでMに興味を持った。

 

(私も相手もいかれている、と何度も何度も思いながらこの文章を書いている。)

 


そのあとは1年ほど奇妙な関係が続いた。

 


私は彼氏がいて、別に大きな目標もなく、なんとなくチャラチャラ、フラフラしてる美容学生。

Mは院生時代に付き合っていた女の子を未だ忘れられないまま、めちゃくちゃ働いていた。バイトしかしたことなかったこどもの私から見たら、社畜という言葉がこれほどにしっくりくることははじめてだった。

出身も地方からがっつり違ったし、当時住んでたとこも東京と関西。

 

共通点ゼロ。

 


そんな私たちは毎日LINEをした。

何をやりとりしていたのか、それこそ覚えていない。

 

 

でも、私はMに惹かれた。共通点などないはずのMに自分を重ねた。

Mも、私を自分に似ていると言った。

 

言葉の使い方、物事の感じ方。生活してて気になるポイント。いいと思う音楽の話。
私は気持ちを隠さずにいられなくなった。

もっと話して、もっと知りたいし、もう一度ちゃんと会いたい。

性欲とかわからなかったけど、この人が、私の知らないあの子をもう一度抱きたい、と思うように、私のことを良いと思ってくれて、欲情してくれたら、、と想像するようになった。

向こうも私のことを同じように、少なからず興味を持っていることはわかっていたから、私は若さに任せて押しに押した。

 

今まで誰かに気持ちをまっすぐ伝えるなんてしたことがなかった。

でも、ここを逃したらダメだと強く感じた、変わりたい、殻を壊したいと思った私は、恥ずかしいとか抜きで、あなたが好きになったと、好きだから会いたいとたんたんと伝え続けていた。神戸まで飛んで行った。

今思えばヤバすぎる、怖いよ私。

Mが折れるかたちで結局付き合った。

きっと世間体すごく気にしただろうし、自分は正気じゃないと思ったんだろうな。その感覚は間違ってないよ。おかしかったもんわたしたち。

 

冷静に考えれば考えるほど割と犯罪だ。

 

そんなわたしたちを引き合わせたのは一言で言えば生きづらさだと思う。

 

 

 


幼少時代、地味で、引っ込み思案でいじめられっ子だった私は、どんなに化粧して華やかに着飾っても隠せない根暗さみたいなものを自分の中に感じていた。

いじめっ子が男の子だったので、心のどこかでいつも男の人が怖かった。

今でも女性らしく振る舞って男の人に優しくされようとするのは、男性が怖いと言うトラウマから自分を癒すためのように思う。

 

 

 

Mは、賢い人だった。

大学院まで勉強し、就職活動してもどの会社もそんなMをほしがったらしい。

最後大手2社で内定が決まって迷った話とかしてたな。

ルックスもよかったし、料理をはじめ生活全般も器用にこなしていた。

いろんなものを持っていた。

でも圧倒的に協調性というものが足りなかったように思う。

言い返さない方がいいところで言い返すし、あまのじゃく。

よく言えば孤高、悪く言えば自己中。

それでいてすごく繊細な、少年のような、いや、引っ込み思案な少女のような性格だった。

精神的に参った時物にあたる。髪を自分で切る。そんなどうしようもないところもあった。

 

 

陽気に、簡単にコミュニティに溶け込めるふりをして、それはあくまでふりなこと。

結局、自分はちゃんと溶け込めていない孤独感。

気にしない、とか、ある人は難なくクリアできることができない自分。

他者を敏感に感じ取ってしまうゆえに、常に落ち着かない心。

 


今でさえいろんな病名がついたおかげで、、ていうか、病名がつかなくても、多様性が認められているから、そういう人たちのケアをしましょう、社会の中で受け入れていきましょうとなってる。

でも、実際どうなんだろう。

 


私も社会に出て働く中で、そういう生きづらさを感じないで生きてこられた人たちには、ざっくり言えば甘えにしか見えてない、ダメな人たちとしか思えない、ような感じがする。まぁ実際ダメなんだけど笑

 


だから、やっぱり似たもの同士で、気持ちをわかってくれる同士で肩を寄せ合う。

 


そんな生きづらさを持つもの同士、私はMを理解していると思っていた。

 

 

 

でもそれも幻想の部分が大きかった。


いくら似ていても、やっぱり他人。

 


お互い、惹かれていけば惹かれていくほど、今度はその違いが歪になり関係が崩れていった。

 

 


初めて出会った、自分の片割れのような人。生まれてくる前どこかで会ったことがあるような懐かしい気持ちになる、大好きな人。

 


Mは、私が10の中で1話せば、その気持ちを手で取るようにわかってくれたし、私もそうだったと思う。

狭い部屋で二人でいれば、そこはどこまでも二人だけの国で、安心して眠り続けた。

 

 

 

そんなMとすれ違いを感じれば感じるほど私は焦った。

 


Mを一番近くに感じていないと心許なくて、会えない夜は泣いてばかり。

一人暮らしのさみしさも相まって、しっかり依存してしまった。

思い返せば迷子の幼子のよう。

 


『早く遠距離終わらせて、一緒に暮らそう』

 


付き合い始めた頃にした約束が、果たされなくなるのでないかと思えばヒステリックになってしまった。

 


まるで仕組まれてそうなったかのように最悪のタイミングで彼の仕事までうまくいかなくなって、それは口実だったかもしれないけど、とにかく一緒に暮らせるような状態ではなくなった。

 


色々限界だった私たちはもう一緒にいてもプラスになることがほぼないのはわかっていたけど、私からは手放せるわけなかった。

向こうから別れてほしいと言われた。

 

電話越しに放たれた、きっと全部諦めた、あっさりとした、俺と別れてほしい、の声は今でも忘れない。

心がシン、、と冷たくなった。

 

 

 

 

 

 

 

別れてから半年ほど、抜け殻のような私は、抜け殻のまま考えた。

どうしたらよかったんだろう。

あんなに相性がいいかと思われたのに、最後は弾き合うように別れてしまった。受け入れられなかった

 


最終的に行き着いた答えは、

 


"他人は他人であるということを理解する"

 


というごくシンプルな答え。

 

 

 

"大人はいないということを理解する"

 

 


ということ。大人はいない。みんな大人のふりをするのがうまい子どもだ。みんないくつになっても弱くてわがままな部分がある。

 


私はMが、他人でいることも、

そして9歳も年上なのに大人でいないことも、許せなかったのだ。

 


全部を愛していると口では言いながら、現実では自分の理想を押しつけて、ゆっくりと押し潰してしまった。

 


激しく後悔したし、自分が恋したときの盲目さの恐ろしさをひしひしと感じた。

ごめんなさいと伝えらないのが苦しかった。

 

 


今、わたしには新しい恋人がいる。

 


もう過去は変えられない、過去からは学ぶしかできない。そうなったら今の恋人を精一杯経験を活かして愛そうと決めた。

 


恋人のそのままをそのまま受け入れよう。

二人でいる時は、恋人が大人のふりをやめて、安心して子どもに戻れるような、私でいよう。

 


そして今の恋人と私はあんまり似ていないのが救い。

二人の違いは、最初からで〜んと我が物顔でそこに横たわっていて、その上で付き合っているから、もはや許す許さないとかの問題じゃない。

 


でも、やっぱりどこか似ているところもあって、なんとなく寄りかかりあって生きている。

なにかとデリケートで睡眠をとるのも食事をとるのも下手というか、なんというか。

で、たまに私も弱った時、ご飯が喉を通らなくなったり、一睡もできなかったりして、彼の世界を垣間見たりね。

 


これくらいがちょうどいい。

 

 


恋人は私が自分に持っていないものを持っているところが好きだと言ってくれる。

私も恋人に対してそう思っている。

 

好きな人と違ってていいんだ、

分かり合えなくていいんだ。

こんなに穏やかな気持ちで人を好きでいられる自分がいたことに驚く。

彼の世界を、すこし離れた、でも、お隣さんくらいの距離からやさしく守りたいと思っています。

 


そして、Mとの思い出も時間が経って、優しい気持ちで思い出せるようになった。

 

思い出の中の悲しかったこと、苦しかったことみたいなネガティブな部分がゆっくりと底に沈んでいって、優しくて綺麗な思い出だけが上澄みになって思い出せるようなイメージ。

 


その中の一つを最後に書く。

 


大前提として私は普通の女。

ビジュアルだけでご飯食べていける、もしくは世渡りにおいてビジュアルのおかげでいいことがあるかといえばまったくもってそんなレベルではない。

 

当時Mはストレスと恋愛フィルターがかかって、少し狂っていたようで、私のことを本当にかわいい、かわいいと言ってくれた。

そして、私がなにかと自信をなくせば、"かわいいから全部大丈夫だよ"と言ってくれた。

 

当時、なにが何が全部大丈夫だよ!と思ってたし、今も全然何が全部大丈夫なんだろ?と思うけど、たまにしんどいとき、奥の手で、私はかわいいから全部大丈夫、と呟く。

仕事で上司に詰められた時、まぁ、私かわいいし大丈夫と自分を励ましてみる。

 

そうするとなんとなく笑える。


そんな小さな呪文と、勝手に、自分可愛いと思い込むことで"大丈夫"でいてもいい、という雑、且つ大きな気づきをくれたMに、ずっと感謝している。

ありがとう。

で、本当にごめんなさい。

 

30点の恋愛だった。

 

でも、死ぬ前に走馬灯でピックアップされるだろうなっていうインパクトのある時間だった。

 

あなたの幸せを、ずっとずっと願って。

 

そして、かなえられるかは微妙なんだけど、いつか私がちゃんと大人になって、全部が優しい思い出になったとき、会いに行っていいかなぁ